リハビリには、クララにとってのハイジのような存在が必要なこともある

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はじめに

 

「アルプスの少女ハイジ」の感動シーンの一つ。動画でそれを改めて観たのですが、最初に観たときは、かなりドキッとしました。まるで自分に言われているような気がしたからです。しかし不思議なことに、いま観るとハイジに励まされているような気持ちになります。クララにとってのハイジのような存在は、リハビリ期には大切なのだと感じました。そこで、今回はその名シーンを振り返ってみます。

  

「アルプスの少女ハイジ」の名シーンを振り返る

 

ハイジがクララを叱咤激励する 

ハイジ:

もう少し頑張らない?ねえ、クララ。

 

クララ:

イヤよ、おじいさんだってゆっくりやりなさいって、おっしゃったじゃない。

それにダメなのよ、この脚。ハイジが言うみたいにすぐには立てないんだわ、きっと。

 

ハイジ:

クララのばか!何よ意気地なし!一人で立てないのを脚のせいにして!脚はちゃんと治ってるわ!クララの甘えん坊!怖がり!意気地なし!どうしてできないのよ!そんなことじゃ、一生立てないわ!それでもいいの?

クララの意気地なし!もう知らない!クララなんかもう知らない!

 

そして、ハイジが走り去った後、クララは何もつかまらずに立ち上がるのです。

 

クララが立てなくなった理由について

クララの病気については諸説あるようですが、原作の中では「転換性ヒステリー」とされているそうです。ヒステリーは身体表現性障害の一つで、現在では転換性障害と呼ばれています。 

身体表現性障害とは、心理社会的要因が引き金となって、身体疾患のような症状が出現するものです。その症状のために、日々の生活を送るのが苦しくなっている状態を指します。

 

子どもの場合、身体的にも精神的にも未熟なため、心理社会的なストレスを自覚できず、しかも言葉で表現しにくく、行動や身体症状になって現れやすいのです。一般には年齢が高くなるにつれて患者数は増え、男性よりも女性の患者さんのほうが多く2倍にも上るといわれています。

 

診断は身体的な疾患が認められないことが条件です。その上で、あたかも身体疾患を持っているような症状が認められます。たとえば、何らかのストレスや心理的な要因が引き金となって、運動機能や感覚機能が損なわれています。

 

(出典:日本小児心身医学会ホームページ)

 

クララの場合、きっかけとなったのは両親の離婚でした。母親が家を出て行くとき、クララが母親の名前を呼びながら後を追って玄関の外まで出て行った際に、転んでしまったそうです。しかし、母親は振り返ることもなく去ってしまいます。

 

それ以来、クララは立てなくなるのですが、それは母親に見捨てられた経験により、「精神崩壊を防ぐために、これ以上、見捨てられることは受け入れられない」という無意識からの非常事態宣言によるものだと言われています。そして、「立てない限りは周囲が自分を見捨てて去っていくことはない」と無意識に思い、長期にわたる車いす生活が始まったのだそうです。

 

 回復するときに必要な存在について

 

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叱咤激励してくれる人は貴重な存在

不調なときにこのように言われたら、かなりつらいと思いますが、リハビリ中になると励ましのメッセージのように受け取ることもできます。きつい言葉に思えるかもしれませんが、ハイジはクララの状況をよく把握した上で、愛をもって言っています。あなたの近くには、ハイジのような人がいるでしょうか。それは友人かもしれないし、家族、恋人、医師、看護師、作業療法士、デイケアスタッフ、事業所のスタッフ、あるいは上司や先輩かもしれません。

 

孤独なリハビリ期に、単に共感したり甘やかしたりするだけではなく、ときに叱咤激励し、厳しく接してくれる人の存在は貴重だと思います。近くで見守る側にとっては、意外と共感だけするほうが楽であり、厳しく接するにはかなりエネルギーを必要とするものです。厳しく接すると言っても、この場合は、自分の価値観の中にある基準と比べて相手を否定するのではなく、相手のことをよく見て考えて、本人の力を信じて愛情をもって指摘することを指します。

 

回復の時期が自分でわからないこともある

長い間、闘病していると、自分で回復の時期がわからなくなってしまうこともあります。例えば、うつ病の治療の場合、適切な薬物療法と十分な休養に始まり、認知や感情的反応などの心理的要因や、環境調整などの社会的要因にアプローチしていきます。そして、生活リズムがある程度整ってくると、デイケアやリワークデイケアへの参加を勧められることもあります。

 

リワークデイケアに参加されている方を見ていると、参加開始から3ヶ月を過ぎた頃から状態がよくなる方が多くいらっしゃいました。しかし、その後かなり回復して復職が近くなっても、中には最後になかなか踏み出せない人もいるのです。休養期間が長ければ長くなるほど、その傾向が見られるようです。

 

“人”という社会資源を活用する

そういったときには、第三者の視点や意見が役に立ちます。特に回復したいという気持ちが弱くなってしまったときや不安が強まったときなど、背中を押してくれる人の存在が必要なこともあります。また、デイケアなどのリハビリを目的としたコミュニティに入っていると、同じような状況にある人の存在に励まされることも多々あるでしょう。自分と似た疾患をもつ人がどのような変遷を経て回復に至ったのかを知ることで、回復時期の目安や、具体的にどのようなことをすればいいのかがわかります。人も社会資源の一つです。有効に活用していくことが大切です。

 

おわりに

 

人は、厳しい言葉よりも優しい言葉のほうが受け入れやすいものです。長い間、そういった状態に慣れていると、余計にそう感じるかもしれません。しかし、本当の優しさを考えたとき、愛情にもとづいた厳しさのほうが、結果的には優しさにつながっているということもあるのです。気づかなかった視点を与えてくれて、目が覚めることもあるでしょう。

 

そう考えると、自分にとっての理解者がいかに大切かということがわかります。それは必ずしも医療や福祉の専門家である必要はないかもしれません。自分の状況や疾患について、よく理解してくれている人であれば、適切なアドバイスをしてくれるのではないかと思います。時には、第三者の考えや意見に耳を傾ける姿勢も大切にしていきたいですね。

 

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